沖縄旅行2日目 ~昆虫採集ツアー~2013年07月23日 23:42

カラスヤンマ♀
【枝先で休息するカラスヤンマ♀】
NIKON D300S
AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200 F2.8G + TC-17EII (340mm)
12bit RAW
1/160sec. F5.6(合成F値)
ISO 800


 沖縄2日目はやんばるでの昆虫採取ツアーです。
 目的はリュウキュウギンヤンマ、オニヤンマ(沖縄島産)、カラスヤンマです。もちろん他にも南方系のトンボやチョウを初めとした、珍しい昆虫全般なのですが。
 さてさて結果はどうだったでしょうか・・・

 さすがに目的の昆虫を採集するためには、それがどのような環境に生息しているのかを知らなければ、採集どころか出会うことも出来ません。
 短い滞在時間でそう簡単には行かないだろうと思っていましたので、今回も自然ガイドを予約していました。
 一昨年の石垣島に行った時も、現地の昆虫ガイドさんにポイントを案内してもらったのですが、前回は目的の昆虫は採集できませんでした。
 今回お願いしたのは、沖縄自然ツーリストという所の昆虫博士(農学博士)下地幸夫さんです(詳細はこちら)。
 あらかじめメイルで何回かやりとりをして、目的の昆虫が観察&採集できそうなポイントを案内して頂きました。

 ガイドの下地さんとの待ち合わせは道の駅大宜味。
 少々早く着いたので駐車場で虫を探していると、何やらふわふわと舞うように、見慣れない姿のチョウが飛んでします。素早く二男君がネットインして良く観察すると、いきなりレア種のツマムラサキマダラでした。幸先の良いスタートです。
ツマムラサキマダラ
【ツマムラサキマダラ】
AF-S Zoom Nikkor ED 28-70 F2.8D(IF) (70mm)
12bit RAW
1/640sec. F5
ISO 200

 その後も給水するアオスジアゲハなどを観察&撮影している内に、ガイドの下地さんが到着。
 早速ガイドツアーに出発です。

アオスジアゲハ
【アオスジアゲハ】
NIKON D300S
AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200 F2.8G + TC-17EII (340mm)
12bit RAW
1/400sec. F8(合成F値)
ISO 200

アオスジアゲハ顔正面
【アオスジアゲハ顔正面 by 二男】
OLYMPUS TG-2
スーパーマクロモード
オート

アオスジアゲハ顔ドアップ
【アオスジアゲハ顔ドアップ by 二男】
OLYMPUS TG-2
スーパーマクロモード
オート

水面に投影するアオスジアゲハ
【水面に投影するアオスジアゲハ by 長男】
SONY DCS-RX100
プログラムオート

 下地さんと合流し、まず初めに行ったのは、『道の駅ゆいゆい国頭』近くの水田地帯と開けた河川区域でした。
 ここでも大型のヤンマ類の観察実績があるらしいのですが、生憎今日は大型のヤンマ類は見当たりません。
 その代わり、ハラボソトンボとタイリクショウジョウトンボは数多く見られ、取り敢えず"押さえ"でゲットしました。

ハラボソトンボ♂
【ハラボソトンボ♂】

ハラボソトンボ♀
【ハラボソトンボ♀】

タイリクショウジョウトンボ♂
【タイリクショウジョウトンボ♂】

タイリクショウジョウトンボ♀
【タイリクショウジョウトンボ♀】

 タイリクショウジョウトンボは前回の沖縄旅行の際には採集していませんでしたので、子どもたちもそれなりに納得していたのですが、目指すは飽くまで大型のヤンマ類ですので、なかなか満足するまでには至りません。
 そんなわけで、逸る二人を何とか押さえてゆいゆい国頭で昼食を済ませ、次なるポイントに出発です。

 午後の部のスタートは、いよいよやんばるの核心部、国頭村の与那林道に向かいます。
 舗装路の終点にはどこかの大学の施設があり、山の大部分を大学が所有だか管理をしているそうで、どこでも勝手に立ち入って採集しまくって良いわけではないそうです。こういう所もしっかりとしたガイドさんに聞かなければ、分からないものですね。下地さん、ありがとう!
 林道を歩き始めてほどなく、黒い大きなヤンマらしき影を目撃!二男君が網を振りましたが、間一髪で取り逃がし、結局正体は分かりませんでしたが、影の大きさと生息環境から察するにオニヤンマではなかったかと推測され、非常に悔しいこととなりました。
 因みに採集の時は、オトーサンは荷物持ちと写真係なので、一応自分用の捕虫網は持っていきますが、基本、子どもたちに採らせています。特定の場所に拠点を設けて、『よし、採りまくるぞ!』と言うことであれば、荷物や写真機材を置いておいて、自分も捕虫網一つで身軽になるのですが、歩いて探索しながらとなると、どうしても自分は見守る側になりますね。

 そうそう、オニヤンマについてですが、単にオニヤンマと言うことであれば、別に沖縄県でなくとも全国的に普通に見られますので、採れなくてもどうでも良いのですが、一口にオニヤンマと言っても、本土のものと沖縄のものとでは相違点があるらしく、学会では、DNA上でも別亜種に分類すべきだ、という議論が交わされているそうですので、いずれ別種になるような話です。
 さらに沖縄県内でも、沖縄本島のものと八重山諸島のものでも若干の違いがあるらしいので、もしかすると近い内に、沖縄本島のものを『オキナワオニヤンマ(またはリュウキュウオニヤンマ)』、八重山諸島のものを『ヤエヤマオニヤンマ』とかなんとか言うようになるかも知れません。
 要は、それぐらいレア種のようで、以上、全て長男君の受け売りです(苦笑)。それにしてもスゴイ知識だなぁ、と我が子ながら感心しますね。
 因みに本土のものと区別されているヤンマで言えば、オキナワサラサヤンマやリュウキュウギンヤンマ、リュウキュウカトリヤンマなどがいますね。

 オニヤンマ(らしきもの)は取り逃がしましたが、その後さらに林道の奥に進みます。
 なかなか目的の種である大型のヤンマ類には出会えませんでしたが、モンキアゲハを追っていた長男が、『カラスヤンマのメスが止まっている!』と叫びました。それが冒頭の写真。
 これがまたヤラシイところに止まっていて、崖下の川に向かって突き出ている木の枝先なんですよ。普通に林道から竿を伸ばしたのでは全然届かない距離で、とにかく足場が悪く、それに他の枝が邪魔でそう簡単には採れそうもありません。
 長男君の考えは、『自分で採集しなくても、とにかく誰でもいいから捕まえて、手に取って観察したり標本に出来ればOK!』
 二男君の考えは、『観察や標本はともかく、自分が採りたい。自分が採れないくらいなら採らなくていい。』
 出来れば子どもたちに採らせたかったのですが、どう考えても子どもでは無理。ガイドの下地さんも『これは難しいですね。』と来たもんだ。
 結論は、『危険を冒して(と言っても自分にとってみればそれほどの危険ではない)おとーさんがチャレンジする。採り逃がしたら諦める。』と言うものでした。
 現場は確かに足場が悪かったのですが、そこは普段から岩山に登ったり木に登ったりしていますので、大したことはありません。ただ、木に手や足をかけた時の振動で、カラスヤンマが飛び立ってしまわないかだけを気遣いましたが、無事カラスヤンマをゲットしました!オヤジの面目躍如です。虫採り暦で言えば一応先輩ですからね。

カラスヤンマ♀
【カラスヤンマ♀】

 長男君は写真の通りご満悦でしたが、気に入らないのは二男君。
 しょーがないじゃん、このためにわざわざ沖縄のやんばるまで来て、高いガイド料を払っているんだから、キミの欲求を満たすだけで済ませるわけには行かないんだよ。と諭すのですが、悔しくて悔しくて仕方ない様子。なんだかんだでまだまだ幼いですな。

 その後も与那林道をうろつきましたが、結局大型のヤンマ類に遭遇したのはこれっきりで、他に目ぼしいものはリュウキュウハグロトンボとリュウキュウルリモントンボくらいでした。

 そうそう、昆虫ではありませんが非常に珍しい生き物と出会いました。イシカワガエルです。
 イシカワガエルは、日本で一番美しいカエルと言われているそうで、地球上で沖縄本島と奄美大島にしか生息しません(いわゆる固有種というやつです)。沖縄県と鹿児島県の天然記念物に指定されています。
 生息環境が限られている上に夜行性ですので、昼間お目にかかれることは非常に稀だそうです。出会えてとってもラッキーでした。

イシカワガエル
【イシカワガエル】

 そう言えば、前回の沖縄旅行の際に石垣島に行った時も、ヤエヤマセマルハコガメやヤエヤマハラブチガエル、クロイワトカゲモドキ、ムラサキオカヤドカリ、ヤシガニ、キンバトなど、昆虫以外の珍しい野生生物に出会えたっけ。大自然の残る沖縄ならではデスネ。

 大物の影が薄いのできりのいいところで与那林道を後にし、最後のポイント、下地さんお勧めの大宜味村の大保(たいほ)ダム近くの開けた丘陵地帯に向かいます。
 下地さん曰く、このポイントはかなりの高確率でリュウキュウギンヤンマやカラスヤンマの観察実績があるらしいのですが、素人目にはどう見ても、『こんなところに本当に居るのか?』なんですよね。
 だって、物の本にはリュウキュウギンヤンマの生息域は”開けた池沼や湿地およびその周辺”と書いてあり、案内された所には水っ気は一切ありません。ほんとうかな、と半信半疑で車を走らせていると、先を走る下地さんの車が止まり、降りてきた下地さんが『居ましたよ、大型のヤンマが往復飛翔しています。』と教えてくれました。
 網を持って車から飛び降りる子どもたち。息をのみ低く構えるそばに、見るからに大きなヤンマが迫ります。リュウキュウギンヤンマに間違い有りません。
 ヤンマは群舞しているわけではありませんが、確かにある一定の縄張りを確保しながら、2~3匹は道路上を行ったり来たりしています。
 動きをよく見てタイミングを合わせて網を振れば、子どもたちにも採れそうです。
 とりあえず何匹も飛んでいるので子どもたちにも採れるチャンスはあるだろうと思い、自分は少し離れたポイントで子どもたちが採れなかった時の保険のためにリュウキュウギンヤンマの♂を1匹ゲットしました。
 すると程なくして、長男君が興奮した声で、『やったーー!!リュウキュウギンヤンマ、採ったぞーーー!!』との叫び声が。
 なんと二男君よりも先に、長男君がゲットしたのでした。

念願のリュウキュウギンヤンマ♂
【念願のリュウキュウギンヤンマ♂】
NIKON D300S
AF-S Zoom Nikkor ED 28-70 F2.8D(IF) (70mm)
12bit RAW
1/250sec. F5.6
ISO 200
SB-800 先幕シンクロ

 普段親子3人でトンボ採りに行くと、一番収穫が多いのは二男君で、長男君は毎回毎回後塵を拝してばかりなのですが、今日だけは違いました。
 正直、親の目から見ても虫とりが上手いのは明らかに二男の方で、長男の方はどちらかと言えば”どんくさい”系で、採るなら二男かな、と思っていただけに意外でした。はっきり言って奇跡に近いと思いました。
 たまたま運が良かっただけなのかもしれませんが、おそらく彼の執念が実ったのでしょうね。おととしの沖縄旅行の時は石垣島まで行きながら、何度か目撃したにもかかわらず、目当てのリュウキュウギンヤンマは採集できずに悔しい思いをし、ずーっとリベンジしたい!と言っていました。
 虫採りの神様が居るとするならば、今日だけは長男に味方してくれたのかもしれません。
 言い方を変えれば、いつもどんなに空振りしようが採り逃がそうが、腐らずへそも曲げず、何時か採ってやる!と頑張っていたからこそ、神様はほほ笑んでくれたのかも知れません。そう思いたいです。
 満面の笑みを浮かべ満足顔の長男を見ていたら、なんだか涙が出そうになってしまいました。本当に良かったね。
 それも見て面白くないのが二男君で、いつもは自分の方が上手に沢山採っているのに、どんくさい兄貴に先を越されて彼のイライラは最高潮に・・・
 悔しさのあまり、持っていた網の棒をへし折って、半べそどころか大泣きに泣いて、車の後部座席に泣き伏してしまいました。。。
 前半戦のカラスヤンマもそうですが、やっぱりこういうところに幼さが垣間見えますね。こうなったらもう、どんな言葉も彼を納得させることは出来ません。
 でも現実ですから仕方ありません。泣いて泣きながら現実を受け止めて、彼にも大きくなってほしいと願うばかりです。
 でも、悔しいのは分かるけど、短気を起こして物に八つ当たりをして、大事な捕虫網をダメにしてしまうのはいただけません。親として当然、ダメなものはダメだと諭しましたが、今日の彼にどこまで声が届いたかは、、、


 悲喜こもごもの昆虫採集ツアーも大団円となり、沖縄旅行2日目も無事(?)に過ぎ去って行きました。
 当初目的としてた、リュウキュウギンヤンマとカラスヤンマを採集した長男は、いつかマス釣りに行ったときと同じく、『今日はおれの今までの人生でサイコーの日だ!』とノタマッテおりました。
 自分が、『40cmのニジマスを釣った時も、人生サイコーの日・・・と言っていたけど、今日と比べるとどっちがサイコーなの?』と聞いたところ、少し考えた彼は、『マスを釣った時もうれしかったけど、、、やっぱり今日の方がうれしいかな。だって沖縄にリベンジにきて、狙い通り、しかも自分でリュウキュウギンヤンマが採れたから。』だってさ。おおーーー、まともなことを言うじゃんかよーー。
 そりゃ、そう言ってくれなきゃこっちの立場も無いですよ。マス釣りはあくまで釣り堀と言う人工的に管理された場所で、ある意味釣れて当たり前。
 それに比して、傍から見れば、高々三寸ばかりのトンボのために沖縄まで来てガイドを雇って、そこまでする価値が本当にあるんですか!?的な事までやっているわけで、家の近くの釣り堀でマスを釣った時の方がうれしい、なんて言われた日にゃ、『ふざけんなーーー!!!!』ですよ。
 と言いつつ、大人なら仮にマス釣りの方が良かったとしても、そういう空気を読んで、”気を遣う”事もあるのでしょうが、そこは純真無垢な子供の素直な感想ですから、心底トンボが採れた方がうれしかったことに嘘偽りはなさそうです。こちらもわざわざ沖縄県はやんばるの山の中まで連れてきた甲斐がありました。

 今日の出来事は、二男君には苦い思い出となったかもしれませんが、どちらにしろ子どもたちには、生涯、忘れることのない思い出となる事でしょう。そう信じたい。。。